2021/10/13
少年野球の怪我に備える。使える救急箱にするためのポイント9つ
少年野球といえば、怪我がつきもの。
擦り傷、突き指、捻挫、鼻血・・・練習のたびに一人は怪我をしているような状況です。そんな時にすぐに使える救急箱は必須です。
うちのチームには、私も含めて医療従事者がいるのですが、保健係として救急箱の中身を点検することになりました。今回は、いざという時に使える救急箱にするためのポイントについてまとめました。
1.救急箱の中身を出す
救急箱の中身を把握していますか?
砂にまみれたよくわからないものがたくさん入っていませんか?
まずは救急箱の中身を全部出して、何が入っているのかを把握しましょう。
うちのチームには、遠征用と留守番組が使う予備用の二つの救急箱があります。写真は整理前の救急箱の中身です。
チームに所属していた保護者さんのお知り合いが薬局を経営されているとかで、適当にセットを作ってもらったということでした。その後色々と使っているうちに中身が変わっていったようです。
- 謎のヒモ
- 使いこなせる人がいるのかわからない『キネシオロジーテープ』
- いつ開封したかわからない湿布や塗り薬
- 外箱が潰れ&破れて取り出しにくさマックスの絆創膏
- ハサミとハサミケースが一致しない
- 取り扱いが危ない水銀の体温計
改めて見直すと、絆創膏ぐらいしか使えないじゃん!というセット内容に。
2.救急箱の中身リストを作成する
救急箱の中身を見直すにあたって大切なことは、「医療従事者だから」と自分たちの意見を押し付けずに、監督、コーチ、保護者の皆さんの意見を聞くこと。その上で「うちのチームの救急箱チェックリスト」を作成しました。
- バンドエイド各サイズ
- 鼻ぽん(鼻出血用)
- ポケットティッシュ
- 滅菌ガーゼ(個包装)
- 消毒綿(個包装)
- ケンエーシロチン(消毒薬)
- 包帯 大・小
- サージカルテープ
- キネシオロジーテープ
- ハサミ
- 爪切り
- ピンセット 大・小
- 体温計
- 安全ピン
- 裁縫セット
- コールドスプレー(別袋)
- 手袋(別袋)
- ごみ袋(別袋)
- エマージェンシーカード
セットの中の一つ、『キネシオロジーテープ』。
『キネシオロジーテープ』は、筋肉の伸縮率に近いテープ(キネシオロジーテープ)を用いて、筋肉の保護や動作のサポートをし、スポーツでの怪我や障害だけでなく、日常生活での痛みを和らげる目的で使用します。battlewinのテーピング巻き方総合情報サイトが詳しいです。
怪我や痛みを予防したい部位によって、様々な巻き方があり、知識がないとちょっと使いこなせないと思います。自分でする分にはいいですが、痛みを訴える子どもに対し誰でもできる応急処置用テープとはいえません。
監督、コーチ、練習をよくお手伝いされるお父さん達に聞いてみましたが、誰も効果的な使い方を知りませんでした。でも、使いかけのテープがあるということは誰かが使っているはず。収納スペースもあるので、今回は使い切るまで入れておくことにしました。
次にこれらの中身を選んだ理由と、使いやすさを考えた収納の工夫について説明します。
3.プラケースにまとめる
3-1.各サイズの絆創膏をひとまとめに
救急箱の中で潰れて取り出しにくかった絆創膏たち。各種サイズを数枚カットして100均のプラケースへ収納すすることにしました。
同じケースには鼻血が出たときに使える『鼻ぽん』もチャック付きビニール袋に入れて収納。
無意識に鼻をいじっちゃう小学生たち。練習中に鼻血を出す子は結構います。小鼻を5分間つまみ続けることで鼻血は大抵止まります。『鼻ぽん』も必要ないのですが、子ども達が鼻血を出したときに介助につくママたちや、こどもの「ちゃんと止まってるかしら?」の不安にこたえるために入れています。
3-2.こまごまとしたグッズをひとまとめに
救急箱の中のものが多くなればなるほど、モノは探しにくくなり無くしやすくなります。もう一つプラケースを用意して、以下の物を収納しています。
- 消毒綿(個包装)
- ピンセット大・小
- 爪切り
- 体温計
- 安全ピン
- 裁縫セット
消毒綿は使い終わった体温計やピンセットを拭くために使うので、同じケースにセットしました。ピンセット(大)は傷の中に入りこんだ砂などの異物を取り除いたり、ピンセット(小)はとげ抜き用に使えます。爪切りは、子ども達は爪が割れたりすることも多いので活躍します。体温計は安全な電子式に買い換えました。
安全ピンと裁縫セットは、個人的には不要だと思いますが、
- 試合中にゼッケンが取れた
- ユニフォームが大きく破れた・ボタンが取れた
以上のような時に使いたいという要望があったので入れてあります。写真でわかるようにサイズも小さいので邪魔になりません。
ちなみに、チームにお世話になって2年ほどですが、一度も使っているのを見たことはありません・・・。
4.薬は入れない
以前の救急箱には、湿布とゲンタシン軟膏が入っていました。
湿布が入っているのはわかるのですが、ゲンタシン軟膏がなぜ入っているのかわからない。チームの人に聞いても誰も理由を知りませんでした。ゲンタシン軟膏は抗生剤が入った処方薬で、市販されていません。恐らく擦り傷等の感染予防のために入れたのかな?と思いますが、あくまでも応急処置ですので、薬は使いません。
湿布薬も同様です。素人判断で薬を塗ったり、湿布を貼ったりすることは、かぶれや傷にトラブルを起こす可能性があります。
4-1消毒薬をどうするか
副作用を避けるために、薬は救急箱に入れないと書きました。でも、うちの救急箱には『ケンエーシロチン』が入っています。理由は、「傷には消毒薬」と聞いて安心する保護者さんのため。ただし、アルコールでかぶれるお子さんがいないかチェックする必要があります。
少しずつ消毒薬がなくても大丈夫、という意識に変えてもらえるように、基本的な傷の処置について保健係からチームLINEで情報を提供しています。私が見る限り、今も消毒薬を使っている保護者の方はいないようです。
野球の怪我では、擦り傷が一番多いと思います。傷の手当の仕方は数年前から大きく変わってきました。
- 傷は水道水でしっかり洗い流す
- 傷が化膿していない、異物が入っていなければドレッシング材(『キズパワーパッド』等)で覆い湿潤状態を作る(湿潤療法という)
野球の練習中に手当が必要となる子どもは、自分の子以外のお子さんであることがほとんどです。洗浄が不十分だったり、出血が多いのに湿潤療法をして、傷にトラブルを起こしてしまう可能性もあります。
チームでするのはあくまでも応急処置です。しっかり水道水で洗った後は、滅菌ガーゼで水分を拭き取り、一般的な絆創膏(『ケアリーヴ』や『バンドエイド』等)を貼ります。その後の湿潤療法を含む治療等は各家庭の判断に任せることにしています。
5.感染対策を意識する
擦り傷や鼻血など、出血を伴う怪我を子どもたちはよくします。血液や体液などからの感染予防のために以下のものを用意しましょう。
- ビニール手袋
- ビニール袋
素手でティッシュで血を拭いたりする保護者の方がほとんどです。医療従事者には「未知の感染症への対策」という考えが浸透していますので、こういった手当を素手ですることはありません。
コロナウイルスの流行で、手洗いを始めとした感染予防策が大きく注目されています。自分と子ども達を感染症から守るためにも、使い捨てのビニール袋とごみを処分するためのビニール袋は常備しておきましょう。
うちではそれぞれ数枚を外付けの巾着袋の中に入れています。
ビニール袋は、怪我を冷やす氷を入れるのにも使えます。
6.コールドスプレーよりも氷を
デッドボールや練習中に足を捻ったなど、痛いところにシューッと吹きかけるコールドスプレー。
冷たくて子ども達にも大人気です。
実はコールドスプレーは、一時的に痛みをごまかすことはできても、痛めた箇所を冷やし続ける作用はありません。外傷の際の応急処置の基本は「RICE(ライス)」です。
- Rest(安静)
- Icing(冷却)
- Compression(圧迫)
- Elevation(挙上)
このIcing(冷却)で氷を使用します。
今年の夏からうちのチームは熱中症対策として、保冷効果の高いクーラーボックスに氷を常備することにしました。(詳しくは、チームで対策したい、少年野球夏の熱中症対策のポイント7つ を参照。)氷は熱中症だけでなく、ボールをぶつけた、足を打ったなどの怪我にも大活躍しました。
保護者の間でも、「氷があると便利!」という意識が生まれ、怪我の応急処置用に氷を年間常備することになりました。
コールドスプレーは必要ありませんが、「冷たくて気持ちがいいから」という子ども達のリクエストで、そのまま救急箱の外付けの巾着袋に入れています。
怪我の種類・症状・応急処置・治療等対処は、日本整形外科学会発行の『ケガをしたときの スポーツ医へのかかり方』がわかりやすくておススメです。
7.万が一に備えてエマージェンシーカードを
試合や練習中に大怪我や病気など起きて欲しくないですが、残念ながらいつどこで起こるか分かりません。
救急箱には、
- チーム・監督名と連絡先
- よく利用するグラウンドのAED(体外式自動除細動器)の場所
を明記したエマージェンシーカードをぶら下げています。
滅多に起こることはないのですが、ボールが胸に当たって心臓が止まってしまう「心臓振盪(しんぞうしんとう)」という事故があります。ある研究によると、発生数は野球が一番多く報告され、子どもや若い人に起こる可能性が高いといわれています。対処はAEDによる電気ショックが必要です。
参考 健康なこどもに起こる突然死 「心臓震盪」を知っていますか?
命に関わることですので、この「心臓振盪」についても保健係から症状と対処法についてチームLINEで情報を共有しています。
コロナ禍で開催が難しいのですが、救命講習会も企画しています。たいてい自治体の消防署が無料で出張講義をしてくれていると思いますので、問い合わせてみるといいでしょう。
8.子どもと大人で練習毎に中身をチェック
救急箱は主に子ども達が使います。「自分の体と健康は自分で守る!」という意識を育てるためにも、救急セットの中身は大人だけでなく、子ども達にもチェックをしてもらいましょう。
うちのチームは月ごとに野球道具などを管理する、倉庫整理当番があります。この当番に救急箱チェックも組み込みました。
救急箱には「使ったら補充!」と記載したチェックリストをプリントアウトして貼ってあるので、子どもも大人もこれを見ながら補充ができます。
いざ救急箱を開けたら使いたいものがなかった・・・ということがないように、練習毎に中身をチェックしましょう。もちろん、一日の終わりにその場にいる大人が最終チェックをして、子ども達のフォローをしてあげてくださいね。
9.定期的に救急セット内容を見直す
今年は医療従事者がいる関係で、大幅に救急箱の中身を見直しました。ですが、一度見直して終わり、ではありません。より使いやすい救急箱にするために、他の保護者の感想を聞いて内容をアップデートしていきましょう。
私が現時点でチームに提案したい見直し点は以下です。
- 消毒薬は必要?
- キネシオロジーテープは有効活用している?
- コールドスプレーは必要?
- 裁縫道具は必要?
これらに保護者さんの希望が加わり、一年後に新たな救急セットが生まれる予定です。
おわりに
備えあれば憂いなし。
使える救急箱を持って、安心して子ども達と野球を楽しみましょう。